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改正民法(相続法)について

改正民法(相続法)前編

しばらくブログから遠ざかっておりましたが、今回は2019年から2020年にかけて大きく改正されました民法の相続編についてお話したいと思います。

多くの改正がありましたので今回は配偶者居住権について解説いたします。

配偶者の相続分については2016年の法制審議会民法(相続関係)部会においても、現行法の相続分2分の1から3分の2へ増加させようという議論が進められてきました。

ただしこの論議の中では昨今の離婚率の上昇や少子高齢化、高齢者の再婚の増加などにより家族関係が複雑になるなど、一律に相続分を増やすことに慎重な議論が進められてきました。

 

今回の配偶者居住権については自宅の居住権を敷地などの所有権と切り離すことで、相続分は改正せず、生活拠点は保護しつつ、配偶者の実質的な相続分を増やし、老後の生活保障を確保できるようになります。

【改正前】

具体例を記載します。相続人は配偶者と子供2名と仮定。

被相続人の財産が以下のとおりとします。

自宅(土地・建物)・・・5000万円(評価額)

現金・預貯金・・・・・・5000万円

       遺産合計・・・1億円

今までは配偶者が住んでいる自宅(評価額5000万円)を相続すると民法上の相続分は2分の1であるため、法定相続では現金・預貯金など他の財産を相続することができませんでした。

 

【改正後】

自宅を負担付き所有権と居住権に分けてると※1

自宅(土地・建物:負担付き所有権)・・・2500万円

自宅(配偶者居住権)       ・・・2500万円

現金・預貯金           ・・・5000万円

※1 例は半々となっておりますが、所有権と居住権の割合は配偶者年齢により平均余命までの年数で割合は異なります。

改正後は配偶者は配偶者居住権(評価額2500万円)を相続して居住を継続しても、法定相続分の5000万円までは余裕があるので、自宅とは別に現金・預貯金2500万円を

相続することができるようになります。

 

これらの改正は親子関係が円満な場合はより、相続人が後妻と実子など血縁関係の無い場合は有用と思われます。

この改正以外にも20年以上の連れ添った夫婦間での居住用財産の生前贈与・遺贈等が相続分の計算から除外されるようになりました。ちょっと分かりづらいですが、民法上の計算では生前贈与でも特別受益と見なされれば、その贈与も加算して計算することになります。(税法は3年内贈与加算のみ加算となります)

婚姻期間20年以上の配偶者への居住用財産の贈与も特定贈与財産として3年以内に相続が発生しても3年内贈与加算にはならないので、税法と民法では違いますが、考え方は似ていますね。

 

 

配偶者への生前贈与をお考えの方は是非、居住用財産の生前贈与をご検討してみてはいかがでしょうか。メリットだけではなくデメリットがあればトータル的にアドバイスいたします。また、民法と税法のどのように当てはめていくかは専門家でないと難しい所もありますので、まずは電話又はメールにてご相談を承ります。